憧れのモンゴル紀行

私がモンゴルに憧れるようになったきっかけは、10年くらい前に放映されていた、 EDWIN/ジーンズのテレビCMでした。子供達が呼び掛ける「シーナサン、シーナサン」の声のなか、作家の椎名誠さんが蒙古馬にまたがり、緑の草原をジーンズの旗をかかげてパカラッ、パカラッ、と駆けていくの。
一目惚れだったように思います。「か、かっこいい...!」
いつか私もモンゴルの草原で、馬にまたがってあんなふうに駆けてみたい。見渡す限りの大平原で、風を切って疾走してみたい。
モンゴルはそれからずっと私の憧れの土地でした。それから何年かたった学生の頃、中国は北京に1ヶ月程滞在した折に内蒙古・フフホトへの飛行機のチケットを手に入れ、友人と一緒に全くの自由旅行で1週間程、内蒙古に滞在しました。(モンゴルという所は内蒙古(内モンゴル)/外蒙古(外モンゴル)に別れており、内蒙古は中国の統治下にあるのです。中国圏内であるので、当然共用語は中国語(北京語)。但しモンゴル語も使われています。いわゆる自治区ですね) 北京から内蒙古の首都フフホトへの飛行機の中で、日本語を話す台湾の華僑の方とも知り合いになり、一緒にタクシーの運転手を雇い、内蒙古を旅して草原と馬を満喫しました。そしてますます「生粋の」モンゴル人達が集う場所、外蒙古への憧れはつのり...。しかし聞くところによると、外蒙古は内蒙古に比べてもっと自然も素晴らしいらしいけど、「生粋の」モンゴル人は気性も荒く、治安もすごく悪いらしい。どうなんでしょうね? あくまでも(内蒙古で聞いた)噂でしたけれど。
しかし、行きたい! あれから10年あまり、念願かなって、ちょうど 30歳になる今年にモンゴル行きの計画を立てました。ダンナの許しも得て、今回同行してくれたのは「日英欧現代アート展(左下番外編参照)」でのロンドン行きにても同行してくれた友人・セイコ。
旅行にあたり、バックパック背負っての自由旅行も考えましたが、語学の問題(内蒙古の北京語はともかく、モンゴル語はさっぱり自信がない)、首都ウランバートルから草原の奥地に行くのであればドライバーの問題、キャンプ地の問題と、やはり知人もいない初めての土地で、限られた日数で旅をするのは限界があると思い、旅行会社の用意するツアーを利用する事にしました。あれこれ調べた結果、モンゴル/ネパール地域での手配旅行で評判の良さそうな「風の旅行社」を選択。応対したのは電話のみでしたが、なかなか対応もよさそうです。選択したツアーは「騎馬トレックと遊牧民訪問6日間」の旅。189,000円也。ビザが必要なので代理で旅行会社に取ってもらったので、ビザ費用と手数料と消費税と、あれこれ含めると出費は計20万円程、となりました。担当の方に聞くと、該当のツアーはまだ他に申込者はいないけれども、私達のみの2名からでも出発できるとのこと。こ、これは...?もしかしてツアーといいつつ、メンバーは私達二人だけ!? ラッキーかも...(←団体行動が苦手なんです)
目的が乗馬、ということもあり、是非入って下さい、と旅行会社に言われて滅多に入らない旅行保険にも入りました。落馬して命を落とす人もいるとのこと、注意しなくてはなりません。万一落馬して骨折などした場合、モンゴルの首都ウランバートルから新潟までヘリコプターでの輸送となるのだそうです。ぞぞー。気を付けねば。
ということで、不安半分、期待と憧れ半分、の道行となりました。


----今回の旅の登場人物-----------------------
私:古田真理子 このHPの管理人。性格はおおざっぱ、いいかげん。

セイコ:私」の会社時代からの友人。セクハラ女王でセクシークイーン。美人。目元の泣きぼくろがチャームポイント。

サロール:ガイドのモンゴル人。竹中直人似の 22 歳。酒を飲むと絡むのがたまにキズだが努力家で気の効く好青年。日本語ペラペラでケンダマ5段所持者(日本剣玉協会認定)。

バトルさん:乗馬のコーチにしてマスター。奇しくも私と同じ歳の30歳で、結婚した年も同じの(2000年に結婚)新婚?さん。1歳6ヶ月になる子供あり。大柄な身体に爽やかな笑顔で、他の日本人観光客にモテていた。

1日目2日目3日目4日目5日目6日目
2002.9.18(水) 1日目

image私たちの今回滞在したツーリストキャンプ。大小あわせてゲルが10棟ほど並んでいる
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車がキャンプに到着するなり、民族衣装を着たスタッフが馬頭琴と歌、新鮮なミルクで出迎えてくれた
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バー・ゲルでの歓迎会。タイコを叩いているのはネパール人のスタッフでこのキャンプの駐在員。陽気なひとでした
本日は出発の日。ダンナさんは1週間お留守番です。一緒に行こうよと誘ったのですが「オレは水洗トイレの無いところには行かない主義」だそうです。うーむ。まぁ渡航費用もバカにならないし(倍になるしなー)すいませんが私一人で行ってきます。我が夫の理解に感謝しつつ。
最寄りの駅から成田空港への直行便/成田エクスプレスが出ているので楽チンになりました。一路成田へ。そして今年から、モンゴル-成田間の飛行機も就航したということでこちらも直行便が出来て、楽チンになりました。これまでは関西国際空港からしかモンゴル行きの飛行機は出ていなかったんですね〜。便利になったもんだ。すばらしい。
PM01:30 の飛行機で一路モンゴルの首都、ウランバートルへ。
今回はじめて、出発前に成田空港で機内用に冷えたビールを買い込んでみる。お酒、いつも機内サービスの分だけじゃ足りないんだよね〜、ビジネスクラスならともかく、エコノミーでいちいちスチュワーデスさんにおかわりするのも気が引けるし。これなら心置きなく飲めるのだ! 販売店をあれこれ捜しまわるも、ビールを缶ごとテイクアウトで売っているところが意外に少なくて捜しまわる。ちっ、機内持ち込みを見越しているのか。あれこれ探してやっと冷え冷えのビールを売っているところを見つける。450mlのボトル缶を2本購入。セイコは搭乗前からプシュっと開けてぐびぐびとラッパ飲みし、怪しい酔っ払いとなっていた。機内では同じく売店で買ったイカ軟骨と、私が家から持参したアーモンドフィッシュのおつまみを鞄から出して、二人で酒盛りに興じる。カンパーイ。ああ快適な空の旅♪ ふはは。
今回利用したのはモンゴル航空、通称 MIAT でしたがお食事もなかなか美味しかったです。ただ残念だったのは、マイレージサービスが、JAL、ANA、North、どのカードにも付かなかった事。まだまだ新しい?ので、どこの航空会社とも提携していないのだそうです。なんだか最近、そういうのが乗り損に感じてしまってクヤシイ。
機内サービスのビールは見なれないモンゴルかソ連製のもので、なかなかこれも地ビールのようなオツな味で美味しゅうございました。セイコはこの味苦手、と残して私にくれる。
機内で過ごす事、5時間半。途中、ゴビ砂漠の上空を通過する。雲もなく、地表が遠くまで見通せる。茶色の海かと思った...。広大な砂漠に圧倒。しばし見とれる。
夕刻 PM07:00 、定刻通りにウランバートル空港に到着。時差はないんだそうです。こりゃ楽だ。出口付近にて名前入りのプラカードを持って、ガイドさんが待っていてくれました。名前を見ると私達二人きりだし、やはりメンバーは私達だけなのね。ラッキー♪ 自己紹介をして、まずは両替をしにいく。ツアーは食事も3食全て入っているので、あまり必要ないだろうと私は1万円、セイコは5千円ほど換金。

モンゴルはもう秋ですっかり肌寒く、日中は13度ほど、夜になると0度近い気温とのことでした。飛行機の窓から見た草原もすっかり色付き、黄金色(ていうか黄土色)。
その後、別のドライバーさんの運転する旅行社のロゴの入った車に乗り込み、一路ウランバートル郊外の草原の地、アルタンボラクのキャンプ地へ。車で40分ほどの行程だったのですが、この道がすごかった。しばらく走って街を抜けると、道がもうナイのだ。だだっぴろい一面の草原の地を「あのへん」に向かってひた走る。当然、道は鋪装されておらずガタピシの土のママで、車の後ろには黄土色の砂塵が巻き起こる。
ガイドさんはサロールジャルガルという名前で、遊牧民出身ということでした。先にモンゴルを訪れていた友人から、ガイドさんは遊牧民出身者のほうがいいよ(地の利が違うらしい)、ということを聞いていたのでちょっと嬉しい。サロールと呼んでくれと自己紹介される。日本語がペラペラでびっくり。聞くと、大学で日本語を学んだあと、日本にも訪れたことがあり、なんと日本剣玉協会の認定するケンダマ5段の有資格者らしい。モンゴルで剣玉教室をも開いているとのこと。若いのにシッカリしている好青年だ。自己紹介や街の説明などを聞きつつ、あれこれとおしゃべり。
しばらくして話し疲れて、私はずっと窓の外の景色を見ていました。夕闇が迫り、雲一つない薄いブルーの空がだんだんとピンク色から紫に、色付いていってとても美しい。黒く浮き上がった山すそのシルエットに沈む夕日をみつめる。そして東の空にはポッカリと大きな月が!本当に、太陽と見まごうばかり、おおきな、明るい月でビックリしました。こんなに大きな月は初めて見た...。白い光が煌々と辺りを照らし出す。「でっかいねぇ!」と思わず声に出すと、サロールが「もうすぐ満月だから」と教えてくれた。夕闇の中、青白い月明かりとヘッドライトだけを頼りに、一行を乗せた車が一路草原を曝走する。
ようやくキャンプ地に到着。セイコはガタピシの道にすっかり酔ってしまったらしく、顔色真っ青、口数少ない。後で聞くと「かなりヤバかった」とのことでした。だ、大丈夫...? ゲル(モンゴルの遊牧民が家としている、移動可能な白いテント)がいくつか並ぶキャンプ地の前で車は止まり、降りると、民族衣装を着た数人の男女が馬頭琴と歌で出迎えてくれる。きゃー素敵!女性が盃を差し出す。飲むのね?飲んでみると新鮮なミルクでした。車酔いしていたセイコにはかなりキツそうでしたが...(笑) 新鮮でこれまたびっくりするくらい甘い、美味しいミルクでした。儀式的なものなので口をつけるだけで良いらしい。あまーい後味があとをひく。

その後、私達の宿泊するゲルに案内される。ベットが4つ並び、結構清潔だし、かなり快適そうだ。中央に鉄製のストーブが据えられている。朝夕はかなり寒いので、ここで薪を焚くらしい。8時半に食事といわれ、レストラン・ゲル(レストラン専門のゲルが中央にあるのだ)に行き食事。他のツアーで来ていた日本人も10人くらい来ていて、自己紹介。彼等はこの前にゴビ砂漠に行っていてラクダに乗ってきたらしい。セイコが「ここまでの道ですごく酔って...」というと、「あれくらい軽いよ!ゴビのときはもっと酷かったので、それにくらべるとここに来る道は全然大丈夫だったよ」と返される。ゴビ恐るべし。
食事後、今度はバー・ゲル(バー/お酒専門のゲル)に移動、私達の歓迎会をやってくれるという。場をしきっているのはこのキャンプの名物?らしい、ネパール人の駐在員。誰かが持ってきてくれた、ボウルいっぱいに入った煎った松の実(殻ごと)を歯で器用に剥きながら、皆でチビチビとつまみにしつつ、ウォッカとビールをぐいぐいと飲み、飲めや歌えやの大騒ぎの宴となりました。なんだかこのノリ、学生の頃のサークルを思い出すわ...、久しくなかったようなノリでした。あと、昔訪れた北海道の某名物ユースホステルをも思い出した。かき鳴らすのは、ギターの代わりに馬頭琴でしたけれど。
お酒をすすめられるも、私は行きの飛行機のなかでさんざんっぱら飲んでいたので自粛、ダイエットスプライトをちびちびと飲む。セイコはまたもやビールをかっくらっていた。強い、セイコ。
しかし、モンゴル人もネパール人達も、ビックリするくらい日本語が上手!一体ココはどこ?と錯角するくらい違和感なく日本語が飛び交っていました。

そのうち、「花火がはじまるから見よう!」とモンゴル人に誘われる。なぬ、花火!?本当?と聞き返すと皆がニヤニヤと笑っている。こんな草原で花火だなんて...ほんまかいな、と外にでてしばらく空を見ていると...。「しゅぱっ!」という音と共に明るい「何か」が暗闇の空に飛び出した。それは落下傘のように、ただし煌々と明るく、ゆらゆらと落ちてくる。その次に、タタタタタタっという音とともに無数のロケット弾のようなものがその周囲に打ち込まれる。あぜん、呆然。聞くと、昨日から数キロくらい離れた隣の草原に軍隊がいきなりやってきて、演習をはじめたという。今日の昼間、キャンプの駐在員の所にタッタッタッと兵隊達がやってきて、「こっちには危ないからこないでね〜」と言い残して去っていったらしい。おいおい、いいんかい!それで!駐在員さんに「こんなこと、よくあるんですか?」と聞くと「いや、はじめてです」と返ってきた。まぁ危なくなければいいんだけど。セイコが、「そういえば来る途中に戦車見たんだよね〜」という。うーむ、恐るべし、モンゴル。アバウトっちゅーかいーかげんっちゅーか。
「花火」が終わったみたいなので皆でぞろぞろとゲルに帰り、歌い踊っているうちに夜がふけ、自家発電の電気が切れる夜12時になる頃に電気が消え、皆がそれぞれのゲルに戻る。明日はいよいよ乗馬。
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2002.9.19(木) 2日目

image隣の平原ではモンゴル軍の戦車が演習をしている
image放牧してある馬を集め、鞍をつける
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ヘルメットも付けて準備万端。自分でゆーのもなんですけど、まるで工事現場のオバチャンのようです
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山の頂上で。見晴らしが素晴らしかった
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モンゴル風揚げ餃子、ホーショル(右)。一口食べると、とたんに肉汁がしたたりおちてウマイ。左にあるのは包子(パオズ)
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昼食を食べ終わって、大の字に寝転がるサロール。その辺に馬のウンコがいたるところにあるけど、そんなもんキニシナイのだ
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川に飛び込んで、泳ぎにたわむれるヒトビト。横の人の革ジャン姿を見ると、この日の気温が分かろうってもんです...
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茶色い三連星。休憩するときは馬が逃げないように3頭一緒に縛っていた
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見て見て!戦車がこんなに近くに! アフォですみません
今日からいよいよ乗馬! 朝、ドッスーン、ドッスーンという凄まじい地響きで目が覚めた。うるせーよ!といいつつ起床。ゲルを出ると、遥か遠くのほうで戦車がキュルキュルと動き演習をしている。すっげー。思わずカメラを取り出し数枚写真を取る。近くにサロールが来ていて一緒に見物。前方右手に戦車が見える。前方左手のほうに小さくヒラヒラと白く見える的があり、それに向けて発砲しているらしい。ちっとも当たらない。サロールと一緒に「当ってねーぞー!」とヤジを飛ばす。
聞くと、モンゴルの軍隊は徴兵制で、18歳から25歳まで(聞きかじり、たしか)の男性は数年間、軍隊に入らなくてはならないらしい。ソ連の統治下にあったころの影響で(政治的には20年程前にそれから脱却、現在に至る)軍備から何からはソ連製のものが多い。大学生は徴兵から一時的に免れられるらしく、サロールはそれを利用して、今のところバックレてるけど、いつか行かなくてはならないかも、とのこと。「いきたくなーい」そうだ。
9時に朝食を取っていると、11時頃に馬を呼び寄せて(馬達はその辺に放牧してあるので、乗馬する前にかき集めなくてはならないのだ)鞍付けなどの仕度後、出発するよとサロールから聞く。出発は11時。
ご飯を食べた後、あれこれと支度する。今日は寒くなるよ!と聞き、あれこれと厚着。つい2、3日前は雪が降ったそうだ。シャツを何枚か重ね着して着ぶくれする。寒いけれど日射しは強いので、日焼けに備えて首にタオルを巻き、日焼け止めとファンデーションを圧塗りし(にも関わらずガビガビに焼けてしまいましたが)落馬に備えてゲル備え付けのヘルメットをかぶる。それからこれも備え付けでモンゴル人も皆付けていたスネ当て(革で出来ていて、ズボンの上からぐるりと膝から下のスネを巻く。乗馬の上では必須らしい)を付ける。日本人観光客10名弱と一緒に出発。
今日は最初ということで、ゆっくり、ゆっくりした道中でした。セイコは初めての乗馬体験。私も久々の乗馬で、最初は恐る恐るだったのですがだんだんと記憶が蘇り、馬をあやつるのが楽しくて! 皆がゆっくりゆっくり進むのがもどかしくて、度々列を離れて、三々五々同行しているモンゴル人と一緒にムチを入れ、機会あるごとに馬を早足にさせる。私は全然気が付かなかったのですが、同行の少数の日本人から非難がましい目つきで見られていたらしい。「あんなにムチを入れて、いいの〜?」みたいな事だったらしい。いいんだよ!現地のヒトと同じくらいでしたよ!んもー。(←団体行動苦手なんですね、つくづく)
列の先頭あたりで、「走る?」と言われて「走る!」と返すと、乗馬のコーチのバトルさんがニッコリ笑って、私の馬にムチをくれた。私もムチを入れる。大人しい馬でなかなか走り出さなかったのだけれど、ようやく走り出した。最初はパカパカ、と跳ねるようなギャロップだけれど(この時が一番腰にツライのだ)、調子が出てくると次にパカラッ、パカラッ、という全力疾走になる。馬が全力疾走しだすと、まるで雲の上を走っているようなのです。落馬に備えてあぶみには軽く足を入れ(落馬した時にあぶみから足が外れないと、逆に危ない)振り落とされないように股の間に力を入れ、前傾姿勢で腰を上げ、左手で手綱を持ち右手でムチをふるい、走る、走る! パカラッ、パカラッ。きーもちいーい!
列を離れ、先んじて草原を、走る。たまに後ろからバトルさんが「右!」とか「左!」とか指示を出す。馬上でバランスを取りながら手綱を動かし、馬を誘導する。たまにバトルさんが後ろに近付いて来て、馬にまたピシッとムチをくれる。うわーまたスピードアップしたよ!こ、怖いかもーっとちょっと思ってきた...。きゃー!後ろから「バランス!」の声。ハイ。
しばらく全力疾走していると、前方に小さな崖が!ぐわわわわ!あぶなーい!きゃー!と言っていると後ろからまた「大丈夫!」の声が。うわわわ。ポーン!!!ジャンプしました。無事着地。ぐっわわー怖かったーーーー。着地後、手綱を引き締めスピードダウン。バトルさんが近付いてくる。「ジャンプしたねー」。ジャンプしちゃったよ!怖かった〜〜。けど面白かったのだ!要はバランスなのね。姿勢を崩さず、落ち着いて手綱を握ると。なんか分かってきたような気がするよ。
誰かが、「モンゴルの乗馬はほんとスパルタだよ」と言っていたのを聞きました。「初心者でも有無を言わせず乗せるからね〜」と。確かに...。でもだからこそ面白いのだ。ふっふ。

皆の列に合流、川の近くの小高い丘に登る。丘といっても、こんもりと土を盛ったような丘陵で、木は一切生えていない。なので見晴しのよいこと。馬で荒れた土の上を一列になって登っていく。「ここから落ちたら死ぬね〜」と他のツアーの人たちと話す。高所恐怖症の一人の男性は「今、オレかなり怖いよ...」と話していた。頂上に着いた。素晴らしい景色!360度のパノラマだ。一時休憩、写真タイム。ガイドさんや、連れてきてくれたモンゴル人達と一緒に写真を撮る。
景色を見ていると、隣の女性が「ケニアの風景と似てる」と言っていた。確かに、この川の近くは水気が多いので下界には草だけでなく木もまばらに生い茂り、サバンナみたい。「ケニアは、これに動物達が悠然と歩いているのよ〜」とのこと。うわぁ、想像できるようだ。それもいいなぁ。
丘を下り、川の近くの木陰にてランチ。キャンプから車でスタッフが昼食を届けに来てくれた。ゴザを敷き、小さな机を何点か出す。うわぁすごい。本格的!その辺に馬のウンコが散らばっているけれど、もうちっとも気にならなくなりました。ていうか、至る所に散らばっているからもう慣れた...。机の周りにめいめい座り、昼食タイム。私はこの時に食べた、ホーショル(モンゴル風揚げ餃子)がとても気に入りました。他に牛の干し肉の入ったスープと(これもダシが効いていてウマかった)中国風の包子(パオズ)。ビールも飲みつつたっぷりと食べる。お腹いっぱーい。
その後、休憩して出発は2時間後だという。「けっこうゆっくりじゃない?」と言うと、馬も休ませなければならないからとのこと。川の流れる水場はあまりないし、この辺にしか生えていないみずみずしい草もたっぷりと食べさせてやりたいのでしょう。
昼食を食べ終わったあと、私は日本から仕入れてきたチェキを取り出す。こないだ内蒙古に旅したときにポラロイドカメラが必要だったな〜と痛感していたので、今回はわざわざこのためにヤマダデンキで事前に買ってきたのだ。モンゴル人はすっごく写真好きで、取り出すと皆が「撮って撮って〜」と寄ってくる。今回も大人気でした。ドライバーさんから、馬の調教師の人まで皆が「撮って!」と言って思い思いのポーズを撮る。その一人からは「本当にありがとう、なんとお礼をいってよいか」とまで言われました(通訳してもらった)。いやぁ、持ってきて良かった。
セイコは、「ガイドブックに、『モンゴル人はポラロイドカメラがとても好き』と書いてあったけどいまいち信用していなかった、ホントなのね〜」と感心していた。いやぁ、思いきってチェキ買ってよかったよ。
暇つぶしにお昼寝する人もチラホラ。私達は散策に出かけました。テクテクとどこまでも歩く。ぐるりと歩いて川の近くに座りしばし休憩、あれこれおしゃべり。口を閉ざすと本当に何の音もせず、聞こえてくるのは川のせせらぎと、たまに鳥の声だけ。のどかだー。と言っていると、他のモンゴル人達も集まってきました。「泳ぐ?」と聞かれる。と、とんでもない。寒いっすよー。ブルブル。川に投げ入れられそうになりながら、ふざけてはしゃぐ私達。一人のモンゴル人が、「オレ、泳いじゃおっかな〜」と。まじっすか!? ほんとに脱いだ!バッシャーンと川に飛び込んだ。あのー、気温13度なんですけど...。目の前でバシャバシャと泳いでいる。すげい。オレも!ともう一人も飛び込む。取り囲むギャラリー。思わず写真を何枚か撮る。おもしれー。

休憩が終わり、ぼちぼちとキャンプに戻る。途中、軍隊の演習場の横を通り、兵隊さん達の横を通り、のんびり挨拶。のどかっちゅーか。戦車を見つけ、隣で記念撮影。いいのか?と思ったのだけどモンゴル人が「いいんだ、いいんだ」と言うからきっといいんでしょう。いや、違う。写真を撮っていると遠くから上官らしき人があらわれ、「あんまり撮らないで〜」と。 あんまり?じゃぁ少しならいいのか(通訳の問題か?)でも長居は無用と、ワラワラとその場を去る。

またぽくぽくとゆっくり歩き、キャンプ地が見えたところから、「これからキャンプ地まで、競争をしましょう!」とアナウンスされる。「腕に覚えのある人参加してくださ〜い」。こ、怖そう〜...!でも走るのは好きなので、こっそり後ろからついていこう。私も参加。セイコも参加。サロールをはじめ、全モンゴル人スタッフも参加。よーい、ドン!
流石、モンゴル人達の手綱さばきには負けます。しかしセイコの後ろにはサロールが付き、二人でムチをかなりあてて走りまくり。セイコが一位となりました。ヤッター!まぁ、スタートもまちまちなかなりいーかげんなレースでしたけど。レース後、サロールがセイコの手をあげて高らかに宣言する。「優勝は、今日はじめて馬に乗った初心者のセイコさんでーす!」 ところが他のツアーに付いてきていた日本人のスタッフにクギを差される。「おーい、これは今日最終日のこのツアーの人たち(乗馬を習いに来ていた人たちだったのです)に花を持たせないと。ダメだな〜サロール〜」しょげるサロール。まーまー、いーじゃない。私達は楽しかったからいーのさ! 3人で固まってふふ、と笑いあう。

夜、レストラン・ゲルで皆と食事。ワイワイと話しているうちに、他のツアーで来ている女性、サヨさん(ケニアの話をしていた女性)とサロールがいい雰囲気なんじゃない〜?という話になる。一緒に遊んで、ケンカしながらじゃれあっているのだけれど良い雰囲気なのだ。ヒューヒュー、と皆でからかう。サロールが何かの用事で席を外した時に、サヨさんが、「冬は日本に帰っていいんだったら、私サロールと結婚してもいいよ〜、モンゴルもいいよねぇ」と言う。すると隣にいたモンゴル人のガイドの女性が「そういう結婚、結構ありますよ、日本人で」という。きゃー、どうよ、サヨさん!とりあえずサヨさん達は明日帰るらしいのですが、遠距離恋愛が実ったら進行状態を教えてね!と盛り上がる。
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2002.9.20(金) 3日目

image私たちはこのゲルで寝泊まりしていました。スタッフと記念撮影。
image民族衣装、デールを身に付けてポーズをとるサロール
image馬の上で飲むビールは、ウンマいのだ!
朝、サヨさんたちが帰るらしい。車に乗り込んだところをサロールと一緒に送りの挨拶に行く。「サロール、一緒に帰っちゃえば〜?」とからかうと彼は「一緒に帰っちゃおうかな〜」と車に乗り込む。ひゅーひゅー!(結局帰らなかったけど)
今日は、私達以外の観光客は皆帰ったということで、私達だけで乗馬らしい。わーい、それはそれで嬉しい(笑)
サロールと、乗馬のコーチ/バトルさんと、もう一人のモンゴルの男性ウラルさん(日本語は話せない、40歳くらい)、私とセイコ5人で出発。昨日と違ってお昼にはキャンプに戻ってくることとして、午前中は近くの遊牧民のところに訪問に行こうという事になる。
セイコの提案で、途中馬上でビールを飲もう、と缶ビールを4本キャンプから持参。リュックから取り出し、馬をゆっくりゆっくり歩ませながら、プシュッとプルトップをあける。4人各々馬上で缶ビールをかかげ、目線でカンパイ。うーん、馬の上で飲むビールはウメー!馬が走り出すとヤバイので、手綱を引き締めながら。(でも、基本的にこちらが何もしなければ馬はゆっくりと歩いているので、心配ないのだ)
道々、サロールから「何か、飴玉とかある?子供にあげると喜ばれる」といわれる。うーん、飴玉はないけど、チェキなら持ってきているよ。これで撮ってあげるといいかも。そういうと「それでいい」という。うーん、チェキ大活躍。
今日の道行きには、黒い賢そうな犬が2匹、付かず離れず、付いてくる。聞くとバトルさんの犬だそうだ。遊牧民に犬は欠かせないらしく、かならずオス2匹で飼うとのこと。家と馬を守るのだそうだ。本当に賢そうな犬。可愛いなぁ。
馬で1時間程歩き、遊牧民が張っているゲルに到着。ここにも黒い犬が二匹、いました。ワンワンワンと激しく吠えたてる。家を守っているのね。この子達も賢そうだなぁ。バトルさんの犬達がそれに応戦、グルルル、、とケンカをはじめる。すぐにそれぞれの主人がたしなめ、大人しくなる。しばらくするとテリトリーをわきまえたのか、一緒になって走り回っていました。
馬をとめて紐を繋ぎ、ゲルの中に招待される。「事前に連絡していたの?」と聞くと「していない」と言う。遊牧民は、連絡せずとも客人は大歓迎、なのだそうだ。必ずお茶や馬乳酒でもてなしてくれる。家の奥にまで通され、暖かいもてなしを受ける。
家の奥に据えられている棚を見ると、周りに観光客と一緒に撮ったらしい写真がいっぱい飾られている。ここはキャンプ地にも近いから、結構観光客が訪れるのかもね〜、と言うとサロールが「そうだよ」と言う。昨日見知ったモンゴル人の顔もチラホラ見かける。「あ、これ、ウチの旅行社のモンゴルの社長」とサロールの指差す人物も写真でみかけた。私達もこの写真集に加えてもらうべく、一緒に写真を撮る。チーズ! お持てなし、ありがとうございました。ミルクティーとお手製のパン、とても美味しかったです。

午後は、「どこに行こうか?」と相談するうちに、ちょっと遠いけどここから一番近くの村に行って買い物をしにいこう、という話になる。バトルさんの指差す先を見ると、地平線の奥、草原の山裾のところにポツリと見えている集落、あそこに行くのだという。ビールとか、かなり安いから買い出しに行こうと。
少人数なのでとても気楽。めいめい、思い思いに馬を馳せさせたり、なんとなく固まってポックリポックリと歩きながら進む。皆歌がとても好きのようで、日本の歌も良く知っている。「ふるさと(♪うさぎおいし、かのやま〜)」「さくらさくら」歌詞もよく覚えてるのね〜、ドリカムの「Love Love Love」なんかも、皆で合唱しながら、笑いながら歩いていく。
馬で歩むこと、1時間半くらい。小さな集落に付いた。周りに住む遊牧民の子供達は、小さい頃はここに集まり、学校に通うのだそうだ。他に病院などもあるという。小さな小さな、村。
ここに知り合いとかいるの?と聞くと「いない」という。とりあえず案内されて小さな売店へ。これ、私達観光客だけだったら売店だってわからないよね〜、看板も何も無い。ソ連統治時代から連綿と続くような、粗末な陳列棚に物が雑然と並んでいる。「あれがモンゴルビールだよ」サロールが指差すビールを5本、買う。皆さんにおごり♪ 500ml入りで一本 70円でした。安い!その場で皆で乾杯する。かんぱーい!店のおばちゃんが見守るなか、目の前で飲む。ぐびぐび。
他に飴やチョコレート、ビスケットなどを買う。しめて500円ほどなり。買うものを買ったら早々に村を出て馬に乗って帰る。ウラルさんが途中で別方面に別れ、走っていく。どうしたの?と聞くと「あのへん(とおーーくに見える馬の影)にいる馬を回収してから帰る」とのこと。ウラルさん、早い!一人で列を離れ、パカラッ、パカラッ、と見事に馬を駆っていく。私達もキャンプ地へ向けて馬を駆る。キャンプ地が見え、夕日がその向こうに沈んでいく。太陽がまぶしいぜ!空がピンク色だ。川をバシャバシャと越え、皆で笑ってふざけあいながら馬を駆る。途中、ウラルさんが左手の奥〜〜の方から土煙をあげて合流してきた。馬を2頭連れてきている。おっかえり〜!と私達が叫ぶと、バトルさんが彼に通訳してくれた。ニッコリと顔を見合わせて微笑む。
いやぁ〜、楽しかったねぇ!明日もこんなふうなのがいいな。

キャンプに着き、馬を繋いでゲルに帰ろうとするとサロールが追い掛けてきて、「今日はシャワーに入れるよ、用意しといた」という。うわーほんと?嬉しい!モンゴルに来てからお風呂に入っていなかったので、ホコリまみれなのだ。しかしこの地では水が大変に貴重なので、二人で毎日ボトル3杯程度の水しかあてがわれず、少量の水で歯磨き、洗顔、手洗い等すませてきたので、シャワーの有り難さが身に染みる。今日、到着した日本人達もいるようなのだが、私達を優先させてくれるとのこと。「今、火を焚いて暖かくしているから、ぬるくならないうちに、早く」とのこと。有り難く入らせてもらう事にした。
泊まっているゲルのほかに、シャワーゲルというのがある。ここはシャワー専門のゲルなのだ。中にはお湯の入ったタンクが2本据えられており、足踏み式のシャワーもある。
中に入り服を脱いで、寒い!と叫びながらお湯をかぶる。しかしいかんせん湯量が少なく、温度調節が効かず(私のタンクからは熱すぎるお湯が、セイコのタンクからはぬるいお湯が出る)蛇口からもチョロチョロとしか出ないので結構大変。洗面器にお湯を出しっ放しにし、たまったら私のお湯とセイコのお湯と混ぜ合わせながらせわしなく入る。「ヤバイ、うまくやんないと風邪ひきそうだ...」しかし久々のシャワーは大変に有り難かった!水って有り難いのねぇ、としみじみと。 髪がびっくりするくらいキシキシいってシャンプーをこれでもか、というくらいに使ってやっと泡立った。さっぱり、サッパリ。

サッパリついでに、マッサージもしてもらうことにした。キャンプにはマッサージ・ゲルというものもあるのだ。モンゴル人のお医者さん(女性のおばさん)が常駐し、乗馬に疲れた身体を揉みほぐしてくれるという。一回1,200円程。身体のあちこちがギシギシと痛かったので、是非やってもらおう。楽しみだ〜
夕飯のあと、セイコと一緒にマッサージ・ゲルに行く。ゲルの中には診療台と薬棚があり、中央でがんがんに薪を焚いており室内はとても暖かい。服の上からマッサージかとおもったら、「脱いで」と言われてちょっとびっくり。診療台の横に申し訳程度のカーテンがかかるけれど、すぐ横では平然と他のおばさんが新聞を読んでいるし、入り口からはモロ見えだし、プライバシーはないものを思わねばならぬ。ただし横に居たセイコには「見んなよ!」と厳命、後ろを向かせる。一応恥じらいはあるのだ。
マッサージは整体のようで、リンパ腺マッサージのようで、筋肉痛を痛く気持ちよく揉みほぐす(たまにアイタタタと悲鳴をあげたくなったけど)快適なものでした。二人順番でマッサージを体験。なんか、筋肉痛も軽くなったような気がする。シャワーでさっぱりと、マッサージですっきりとなり、今日はバー・ゲルはキャンセルしてゲルに帰って寝ましょう。12時の消灯まで本を読みつつ、心地よく寝る。
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2002.9.21(土) 4日目

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チョロチョロと水の湧き出る、美しい泉を馬で渡る
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駆ける!駆ける!
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訪問した遊牧民のゲルにて。陽気な一家でした。中央左が家長、隣が奥さん。奥のオバチャンに私は馬乳酒をグイグイと飲まされた
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ゲルの中はだいたいこんな感じ。中央の2本の柱で天幕全体を支える

思わず笑ってしまった、パシるサロールの連続写真。最初は小さな点だったのが...(後ろに見えるのはキャンプです)
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段々大きくなってき...
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きたきたきた〜!
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おっかえり〜!!
今日は乗馬最後の日。寂しいけれど。今日から別のツアーの人たちとも合流して、一緒に乗馬に行きましょうとそちらのガイドさんから誘われたらしいが、サロールが機転をきかせて昨日と同じように私達だけで、行動するように取りはからってくれた。わーい。
午前中は1日目に登った丘の向こう側に行く。メンバーは昨日と同じようにサロール、バトルさん、私、セイコ。ウラルさんは別のツアーの人たちに付いていった。のどかな草原をまたもや馬を駆りつつ、のんびりと進む。途中、綺麗な泉を渡る。ここは沸き水だということ。綺麗な水。かかる橋も、まるで絵本の世界のようだ。
丘を越えていくと、行く手に小さなゲルがある。あそこに訪問しよう、と馬を降りる。こちらの家族は移動途中だったようで、移動に便利な小さなゲルを(直径6mくらいのもの。普通はその倍)建てていた。小さなゲルに、ちょうど親戚のおばさんが訪ねてきたというところに居合わせ、ゲルのなかは10人くらいがスシ詰め状態。い、いいの?と私達は最初遠慮ぎみだったのだが、陽気な一家の家長さんはどうぞどうぞ!と笑顔で迎え入れてくれた。彼はセイコの持っていたムチが気に入り、手にもってはピシ!ピシ!と自分を叩いたり、私達を触ったりして笑う。陽気な一家だなぁ。馬乳酒と、手作りのパンをご馳走になる。はじめての馬乳酒!馬の乳を発酵させて作るらしいが、かなり酸っぱい。まるでお酢のようだ...。「遊牧民には、これ、ジュースみたいなもんだよ、美味しい」と皆ぐびぐび飲んでいる。健康には良さそうだけど、うむむ、私はかなり、これ苦手かも...。家長がウォッカを空け、盃をこちらにくれる。ありがとう、と左手で受け取ろうとしたらバトルさんが横からあわてて、「右手で受け取って!」と言われる。あわわ、ごめんなさい!とあわてて日本語で謝ると、家長さんは「いいよいいよ!」と笑って許してくれた。知らぬとはいえ失礼しました。
うーん、ウォッカのほうがやはり飲みやすいね。美味しいです。と、私の右隣にニコニコ顔のおばさんがやってきて、ジェスチャーでじゃんけんしよう!ともちかけた。おっけー、じゃんけんね!そして何やら馬乳酒を指差す。なぬ、負けたらこれを飲めとな!?うわー、きつー。でもオッケー、やりましょう。じゃーんけーん、ぽい!!勝った!おばさん、思いきりよく馬乳酒を飲む。ぐびぐび。うわっ、どんぶり一杯飲み干しちゃったよ! こ、これは負けても飲めないよ...、セイコが横で呟く。続けざまにじゃんけん。2回勝って、1回負けました。どんぶりを差し出され、一応口をつけてチビチビと飲む。これで勘弁して〜、と言おうとしたら、おばさん、ぐいっと私の耳を掴んで「飲め〜!飲め〜!」と。うわわわ、爽やかな笑顔で、それはないっすよー、オバサン!勘弁して〜!ともがきつつ、ごくり、と一口飲みました。うーむ、やはりこれはグビグビとは、到底飲めない...。
セイコもおばさんのえじきとなっていた。次に、日本式じゃんけんの後はモンゴル式じゃんけんでやろう、というジェスチャー。サロールからモンゴル式じゃんけんの仕方を教えてもらう。親指、人さし指、中指、薬指、小指をそれぞれいっぽんずつ突き出して勝負する。人さし指は親指に勝ち、中指は人さし指に勝ち、薬指は中指に勝ち、小指は薬指に、親指は小指に、という順繰りで強いのだそうだ。離れた指どおしがだされたらアイコ。おっけー、わかった、じゃんけん!
これでも負けたときはかなり馬乳酒を飲まされました...、うっぷ。でも楽しかった。そろそろおいとましましょうか、と外にでてチェキで記念撮影!じゃんけんのおばさんが家長のおじさんのかぶっていた帽子を取り上げ私に持ってき、私はヘルメットをおばさんに渡して交換。楽しかったです。ありがとう!

ゲルをおいとましてキャンプへの帰り、馬でしばらく歩いていると後ろから「あの一家の車がきたよ」とバトルさんの声が。どこやらに出かけていくのか、白い車にまたもやスシ詰めになった乗用車がブブーッとクラクションを鳴らして私達を追い抜いていく。ワーイ、と手をふると、車のなかから全員の満面の笑みが!顔、顔、顔。笑顔で手を振りあう。 しかしあのー、5人乗りの乗用車に、どうみても10人が乗り込んでいたんですけど...。強烈なインパクトを残しつつ、ブロロロロ、と去っていく乗用車。あの光景は忘れられません。いやぁ、楽しい一家でした。

午後、お昼を食べて、さて今度はどこに行こうかと。なぜかお墓を見に行くことにしました。
なぜお墓かというと、私達がこれまでの道々に動物の白骨を見つけては騒いでいたからです。で、サロールがふざけて「人間のホネもあるとこあるよ!」と。それを受けてマジで「行ってみよう」ということになったのでした。同行したバトルさんは「日本人をそんなとこに案内するのは初めてだ」と言っていました。私もまさかそんなとこに行くとは思わなかったけど、ね。
今日は土曜日なので、軍隊の演習はお休み。ということで、これまで行く事を禁じられていた演習場方面へ向かう。特に境界線があるわけではないので、あくまでも「方面」なのですが。「ここに大砲打ち込まれたら死ぬねぇ」といいつつ、戦車のために掘られた塹壕や、大砲を打ち込まれてボロボロになった錆びたドラム缶などを横目に見ながら馬をあやつりポクポクと歩く。途中、サロールが地面に落ちていた薬莢を発見。いくつか拾い、めいめいに馬上でそれを分ける。うわぁ、なんの弾だろう、これ。でっかい薬莢!マシンガンかなぁ。それぞれ空の薬莢を唇に当て、プープーと弾笛(?)。

そうこうするうちに「お墓」に到着。ていうか、これ、演習場のど真ん中じゃん...。ちとびっくり。お墓の上を戦車がキュルキュル走って、大砲ぶっぱなしてもいいの!? 感覚が違うんだなぁ。
お墓、といってもほとんど平原、草原で、所々に申し訳程度の小さな墓標?や石の塚などがあり、頭蓋骨などの骨があちらこちらに散らばっている。一体、ミイラ化した遺体もありました。恐らく土から出てきてしまったのね。
モンゴルの宗教は基本的にチベット仏教で、土葬が多い。遺体を埋葬してから7週間後にお参りはするけれど、その先のお墓参りの習慣というのはないのだそうです。「自然に帰る」という発想なのかな。なんとなく厳粛な気持ちになる。
さすがに写真は撮れませんでした。御冥福をお祈りします。

その後ぶらぶらとキャンプ地へ帰る。まだ日が高かったので最後の晩さん?で宴会をしようと、キャンプからビールを持ち出し、 2、3kmくらい離れた川原に馬を止め、カンパイする。お疲れ様でした! サロールとバトルさんのおかげで、楽しかったよ。あっという間に飲み終わってしまう。どーする?またキャンプの売店から買う?話していると、「オゴってくれるなら、オレが行って買ってきてもいいよ」とサロール。よし、まかせた!いけ、サロール!
4人が乗っていた馬のなかで、一番イキの良い馬を選ぶ。「これが一番走る」バトルさんが鞍上を調整。「早く飲みたいから早く帰ってきてね〜」と私達。パシるサロール!「きっと早いよ〜」とバトルさん。何分で帰ってくるか、計っていよう!
おしゃべりしながら、一直線にキャンプに走っていき、点となっていくサロールを見守る。お、ゲルに入った!あ、出てきた!俊足で馬に乗る。ゲラゲラ笑う私達。早い、サロール! バトルさんが笑いながら、セイコのカメラを借りて写真を撮る。
あっというまに彼は帰ってきました。早かったね〜、さすがだよ。ビールはかなり泡立っていましたが、美味しかったです。

夜、パジャマを着る時に気が付いたのだけれど、私の全身にジンマシンが出来てしまっていました。うーむ、どうもカユイと思った...。なんだかちょっと、午前中無理ムリ飲んだ馬乳酒のせいのような気がします。身体は頑丈なつもりだったのでちょっとショック。マッサージをしてもらおうと思ったのだけど、女医さんに身体を見せたら「もしかしたら、マッサージに使ったオイル(ベビーオイル)のせいだったかもしれない。様子を見て、今回はやめときなさい」と言われる。残念。

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2002.9.22(日) 5日目

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草原で拾った、薬莢。何の弾だかわからないけどとりあえずお土産にゲット。
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実用とお土産を兼ねて買った、ムチ。結構皆にからかわれたけど、家に帰ってこれをダンナ様に...だなんて恐れ多くてできません。自分で自分を叩きますよ。マジマジ。
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ダンナへのお土産、ウォッカとキャビア。ロシア圏が近いのでキャビアが安かったのだ。このチンギス・ハーン印のウォッカ(アルヒ)はモンゴル人みーんな飲んでいた
今日はキャンプ地のアルタンボラクを去り、ウランバートルへ帰ります。名残惜しいけれど、草原にはお別れです。
午前中にはお迎えに車に乗り、出発する予定だったのだけれど、待てど暮らせどお迎えの車が来ない。サロールに聞くと「うーん、どっかで迷ってるかな〜」。しかたがない、遊牧民は時間に鷹揚なのだ。
ブラブラと時間つぶしをしていると、先日マッサージをしてくれた女医さんが私を訪ねてきた。「ジンマシンはどう」という。あ、ちょっとひいてきたかも...。「オイルのせいではなかったかもしれない。マッサージする?」と聞かれる。するする。身体ガチゴチなのよー。車を待つ間、マッサージをしてもらうことにする。あー極楽...。
お昼過ぎくらいに車が来る。どうやら、やっぱり迷っていたようだ。セイコは行きの車酔いを思い出し、「私また耐えられるかな...」と不安そうだ。そのせいか、帰りの道はルートを変更し鋪装された道路を走ってくれた。
行きとは違う光景。山越え、谷越え...。ヤクー(毛長牛の一種)の一団が目の前を通り過ぎる。小高い山を登りつくすと、眼下一面の草原にポツンと建つ一件だけのゲルが見える。そこにゆっくりと雲が影を落としていく。雄大で、のどかな風景。

ウランバートルは、田舎とは一転してすさまじいスモッグと車溢れる街でした(皆、運転が荒い!)。乾燥していてホコリもすごいし、排気ガスの臭いがまたすごい。空気悪〜〜。最近この空気の悪さも社会問題となっているそうだ。中国の大連やベトナムのホーチミン、スリランカのコロンボあたりを彷佛としました。治安も最近は悪くなっているそうだし、そんなに長居したい街ではないな〜。
ともあれ、今日はお買い物をしましょう。ウランバートル唯一の百貨店なるものに連れていってもらう。あれこれとお買い物。食料品は輸入ものも多く、土地柄ロシアからのものもたくさんありました。キャビアが安い!ロシア産のものが一瓶 800円くらい。なぜモンゴルでキャビア...?とは思うけど、安いので買う事にしましょう。ダンナが「一度、キャビアを腹一杯食べてみたい」と言っていたのを思い出し2瓶購入。あとはウォッカとか、缶詰とか。
土産物コーナーというのもあり、日本人がうじゃうじゃといました。聞くと、モンゴルの観光客は日本人が7、8割を占めているらしい。あとは韓国人、アメリカ人など。モンゴルは日本人に大人気のようだ。なのでモンゴルでも日本語を学ぶ学生の数も増えているのだとか。そういえば、今回泊まったキャンプなんかも、日本人限定の宿とはいえ、スタッフ本当に皆ペラペラだったもんね〜。
そういえば、車の中で「日本がテーマのラジオ番組」というのも聞かせてもらいました。主に日本語を教える番組で、モンゴルに住む学生とおぼしき日本人たちが出演、「メル友」とか「キョドる(挙動不審?」とか怪しい日本語を教えていました。面白かった。

その後、外国人向けのオペラハウスに案内され、民族音楽コンサートなるものを聞きに行く。伝統のダンスあり、歌あり、ホーミーあり。やはりホーミーが一番印象的ですばらしかった。ホーミーって、声の良いお坊さんが唱えるお経みたいね。じっと聞いていると心地よく、脳からα波が出るというのもわかるような気がします。
あとは楽器である「馬頭琴」もそうだけれど(三味線のようでいて、馬の頭が弦のところに彫られている)ダンスなどもやはり馬がモチーフとなっているものが多いようだ。馬はモンゴル人にとって食料源であり、乗り物でもあり、また神聖な動物でもあるみたい。モンゴル人が飼っているのは馬だけでなく、羊、ヤギ、牛、と色々あるけれど、特別の存在なんだなーと思った。(全くもって利口で、他の動物とは違うんですって)

コンサートが終わったら食事に行く。韓国風のバイキング・レストランで、焼肉料理が多かった。肉が旨い。飲み物の注文をウェイターが聞きに来ると、サロールが「今日は最後の日だし、オレがオゴるよ」と。えーそんな! いいの?ガイドさんにオゴってもらうなんて、はじめてだわ...。わーい嬉しい。ありがとう! でも一応、悪いので一番安いビールにしておかわりは控えることにする。一緒に色々おしゃべり。
サロールは旅行会社の正式な社員ではなく、バイトなのだそうだ。社員にならないの?と聞いたのだが(会社からも誘われたそうなのだが)「色々制限が入るから、やらない」のだそうだ。彼はモンゴル初の日本ケン玉協会認定の5段有資格者であり、モンゴル初のケン玉教室で教師を、日本語教室でも教師をしているらしい。弱冠22歳にして、努力家で有能なスバラシー人物なのだ。一度日本にも来ているらしい。

夕食後、彼のケン玉を見たい!と私達のホテルの部屋に招待。彼が自宅から持ってきた年季の入ったケン玉を使い(手垢が染み込み、ケン玉協会の誰か日本人に書いてもらったのか「努力」「根性」という筆文字があちこちに入っている)、私達の前で華麗なケン玉技術を披露する。全て独学だって。すっげーなー。私達も小学生以来のケン玉体験。基本からサロールに教えてもらう。さすが、先生をしているだけあって教え方も上手です。ケン玉の基本をモンゴル人から教えてもらう私達日本人。おかげですっごい上達したよ!確率はまだ低いけど、「ケン先」に玉を突き刺す技も覚えました。小学生時代を思い出しちゃった。流行ったんだよね、実は。
別れ際、「これあげる」と彼からケン玉のプレゼント。うわあ、いいの!?こんな大事なものを....。「いいの、他にいっぱいあるから。思い出に」 ご好意ありがとう。二人で話し合った結果、セイコが受け取りました。

最後に、また小さなメモ帳を手渡された。「よかったら何か書いて」。開いてみると、それは彼が出会った日本人からのメッセージがいろいろと綴られた、サイン帳だった。いろんな人が、サロールへの様々なメッセージを綴っている。うわぁ〜、これは宝物だね。こういうのが彼にとっても嬉しいんだろうなぁ。私達も色々と綴る。今回の旅、サロールがガイドでよかった、ありがとう!日本にも是非来てね、連絡くれれば色々と案内するよ。
日本人と接する仕事をしていて、色々とヘンな日本人にも会ってイヤな経験をしたそうだけど、まぁモンゴル人も日本人もいろんなヒトがいるということで、ぜひともサロールは持ち前の努力をもって頑張っていって下さい。頑張りましょう、お互いに。
心地よい野心家の、好青年でした。

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2002.9.23(土) 6日目

朝起きるとスモッグのせいで、赤々とした太陽が東の空にありました。「空気汚いと赤く見えるんだよね〜、ロンドンも度々そうだよ」とセイコ。そういえば昨日見えた月も赤かったな。
ホテルのビュッフェで朝食。セイコがつんつんと腕をつつき、「ねー、あのボーイさん、かっこよくない?」。見てみるとうむ、確かに、ドラゴン・アッシュの振谷君のような感じのヒトでした。やはりモンゴル人、日本人と似てるのよね〜、顔だちとかそっくりだし、一見して見分けがつきません。やはり同じモンゴロイドなんですな。

サロールと運転手さんが迎えに来たので、一路空港へ。「空港税のトゥグルグ(モンゴルのお金)持ってる?」と聞かれる。げ、しまった、空港税のこと考えて無かった、うかつ。昨日きれいさっぱり現地通貨は使い果たしちゃったよ〜。セイコと相談して「カードが使えたら使おう、もし無理なら日本円を換金するしか無いね」
カードは使えませんでした。幸いにして千円札を持ってきていたので二人合わせて三千円だけ換金。サロールに預けて空港税のチケットを買ってもらう。横で見ていると、何やらサロールが怪しい動き...。ん、自分の財布を出してるぞ。「サロール、お釣は?」と聞くと「ない」と。
セイコが横から「サロール、もしかして足りない分だしてくれたんじゃない?」。うむむ、私は逆の事を考えていたよ。事実は、実は二人分の空港税には三千円ではちょっとだけ足りなくて(100円くらい)、サロールが出してくれていました。(あとで計算した)
「うわーまじ?ごめんね、ありがとう〜」
「いやいや、いいよ、空港税の事言い忘れていたオレも悪かったし、出したのちょっとだけだったから」
最後まで好青年のサロールでした。ビンボな日本人でごめんよ。

サロールと別れを告げ、いざ搭乗口へ。日本人がいっぱいでした。そのなかでなぜか、暇つぶしに昨日もらったケン玉を取り出して、教えてもらった技を練習する私達。かなりウサンクサイ目で見られていました。
モンゴルで学んだ事は、乗馬と、ストーブの焚き火起こしと、ケン玉でしたよ。よい旅だったな。


ふ〜。なんだかエライ長文になってしまいましたよ。ここまで読んで下さった方、お疲れ様でした。
予想以上に充実した、良い旅でした。サロールをはじめ、素朴であたたかいモンゴルの方達に支えてもらったおかげだったのかもしれません。皆様ありがとうございました。
それにしても、時差も無く、成田から直通で5時間半のモンゴル、近い!というのが実感。東京から約半日で草原か〜、いいな〜、魅力だな〜...また、行きたいです。