スペインぐるっと周遊記

2001年6月30日〜7月9日、スペインへ行って参りました。今回は母のお供。母のたってのご所望で、JALパックを利用して周遊の旅です。「情熱の国スペインの全て10日間」。
私、これまで少なからず海外旅行をしてきましたが、キッチリと決められたいわゆる「パックツアー」の旅行は今回がはじめて。ちょっぴり不安でしたが、母を連れての自由旅行も疲れそうだしなぁ。短期間であちこち廻る場合はツアーの方がいいって言うし、それにこのツアーは比較的自由時間が多い方ということで、選択した次第です。さて、どう出るかな〜?ドキドキの出発でした。
2001.6.30(土) 1日目

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モンジュイックの丘から
バルセロナ港を望む
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ガウディが建築設計したカサ・ミラ。
山をイメージしたという

今日は出発の日。休みだったのでダンナさんに成田空港まで車で送ってもらう。福岡空港から乗り継ぎでやってくる母とここで待ち合わせをして、そのままチェックイン。ツアーの添乗員さんが待っていて、自己紹介される。今回のツアーではずっと一緒に旅をすることになるそうだ。そしてチケットを渡される。母はトイレが近いということで、事前に通路側を希望ということを伝えてあったのだが、いざ受け取ってみると二人連続席で窓側、中央席だった。添乗員さんに聞くと、今回の飛行機は満席で二人連続席を取るのが精一杯だったのだそうだ。そして「この満席状態で、お二人揃って席を取れただけでも喜んで頂きたいくらいです」と言われた。な、なぬ。。
ま、要するにツアー側との行き違いで、優先順位が「通路側」よりも「二人連続席」になってしまっていただけの話だったのですけどね。。でも母はどーしても通路側がいいということだったので添乗員さんにお願いをして、JALに掛け合ってツアー客用以外の席を確保してもらい、なんとか通路側ゲット。
しかししょっぱなから「喜べ」と言われるとは思わなかったよ。。出国審査の手順とかもアホみたいに何から何まで、説明するしさ〜。小学生じゃないんだから。。チケットだって個人だったら直接航空会社に掛け合いができるから気が楽なのになぁ。めんどくさー。でも殊更言うと母が不安がるから言わないけどね。うぉー窮屈じゃ!!大丈夫かね、この旅行。

そして一路アムステルダムへ。JALはエコノミーシートにも一つ一つ、個人用テレビが付いていてすごくイイ。バージンアトランティックみたいね。ゲームもついているけど、ちょっと古いしショボかった。ま、仕方ないか。。
アムステルダムのスキポール空港で乗り換え。ここ、つい2週間程まえにドイツへ行く時にも来たばかりだったのでなんかヘンな感じ。妙に懐かしい。。な〜んちゃって少し国際人(なんじゃそりゃ)になったような錯角に陥る。ここって空港にカジノがあるんだよね〜、暇つぶしの人たちがたむろってた。

現地時間 21:20 バルセロナへ到着。毎度ながら大陸横断は疲れるー! でもパック旅行でいいことはさ、足の便を考えなくて済むことだよね!現地ではかならずポーターさんがいるし、必ず送迎付きだし。ぼったくりタクシーの心配もしなくてよし。現地ガイドさんもいていたれりつくせり。あ〜なんて楽チンなの♪
そしてホテルに到着して部屋でくつろいでいると、ドアのすきまに添乗員さんからのメモが。いわく「今日は不愉快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした。楽しい旅行をしていただける様精一杯お手伝い指せて頂きます〜」うんぬん。
な、なんていい人なんだ。。。(単純)ていうか、よっぽど私が怒ってたのが伝わったのかな(^^; スンマセン。母もすっかり感心した様子です。よー気のつくひとや〜。もしも、立場が逆だとしたら私はこんなことが出来ただろうか。いや出来ない。
しかし添乗員さんって大変なのね。。。しみじみ。。

2001.7.01(日) 2日目

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ぐるぐるの螺旋階段。
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サグラダ・ファミリア御誕生の門。
すごいよね、この質量。
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グエル公園にて、トカゲの噴水。
なんて可愛いの!
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おとぎ話に出てきそうな階段でしょ。
グエル公園にて。

2 日目、本日の午前中はバルセロナ市内半日観光。
バスでまずはモンジュイックの丘へ。市内を一望できる。ここは広い公園になっており、かつてのバルセロナ・オリンピックで開会式などに使われたスタジアムなんかもあった。なっつかしー!見てたな、バルセロナ・オリンピック。歌も歌えちゃうよ。バルッセロ〜ナ〜!♪
そしてガウディのサグラダ・ファミリア聖堂へ。スペインといえばここのイメージだったので、おおお、これがか・・とちょっと感動。まだまだ工事中で、足場なんかも組まれており「教会」という聖なる感じよりも、オリジナリティ溢れる奇想天外なオブジェのかたまりみたいな建物ってかんじでした。塔のうえまで上ってみる。むっちゃ細い階段!!螺旋状になっていて、カタツムリみたい(左)。
いやーもう、高所恐怖症にはたまらん景色でしたよ。吹きっさらし。でもどんなに上に上にいっても、彫刻の細やかさは同じ。すごいよなぁ、昔の人。。墜落死とかしなかったのかなぁ。。したんだろうなぁ。。
次はこれもガウディが建築した、グエル公園へ。これは未来の住宅地を構想して作られたものということ、そこかしこにガウディのきめこまやかな構想が反映されている。たとえば、自然の緑と一体化するような土と同じ色の橋桁や道路や、あと「みんなの広場」ってのもあって、どんなに人数が多くてもかならず皆座れるように、ベンチが波打つ形に広場の周りに張巡らされているの。そこに腰をかけて広場に遊ぶことができる。広場は2階にあって貯水槽も兼ねている。ここに溜まった雨水は、広場に敷き詰められている砂利層を通って濾過され、太いパイプ(ロマネスク模様の柱に装飾されている)を通って貯水槽へ。アートと実用性が見事に融和している。
しかしガウディのアートって「伝統」から著しく遊離しているように思うんだけど(今見てもキッチュだもんね)こういう前衛の人に教会の建築や、公共事業である集合住宅を任せることが出来たスペイン人の先見性もすごいものがあると思うナァ。 ガウディは晩年もキッチュな生き方をしたらしく、サグラダ・ファミリアの建設に従事しながらそこに寝泊まりし、まるで浮浪者のような容貌だったということ。道行く人はそれをガウディだと知らず、小銭を投げ与えたらしい。
色んな意味で凄い人だ。日本じゃあり得んなぁ。あえていうなら岡本太郎画伯くらいかしら?
その後、街の中央教会(カテドラル)へ。今日は日曜ということもあって、礼拝が中で行われていた。こんな、何世紀も前に作られた建物を今でも現役に使ってるんだもんなぁ。石造り文化の建物って長持ちです。中の装飾はまさにカソリック!という感じのゴテゴテ、ゴージャスな、蝋燭の光ゆらめき、イエス様やマリア様の彫刻がその光でチラチラと動く、そんな荘厳なイメージでした。うーんドキドキ。
母は中に入ると、現地の人たちに混じって早速十字を切って祭壇に向かってお祈りをはじめた。え?おかーさんってクリスチャンだったっけ?聞くと、しれっと「ううん、でも私、大学はキリスト教の大学だったからネ」。。。。い、いーかげんすぎる。。おうち帰ったら真言密教のお札貼ってるくせにぃ。そんでお経は浄土真宗なの。なんていいかげんな日本人や。。私も人の事言えないけど。でもそんな所が好きさ。悪く言えばいーかげん、良く言えば懐深い(!?)
しかしこういうのを見ていると、なぜかマドンナのミュージックビデオを思い出してしまうのは私だけ?(そんなビデオあったよね)

午後は自由行動。が、しかーし!今日は日曜なのでお店はどこもかしこもお休みなのです。さすが敬虔なカトリックの国。ちゃんと安息日なのね。。きっと。でもすごいよね、デパートまでお休みなんだよ。ボチボチと、小さなお店は空いているんだけど覗いてみるとなるほど、たぶん宗教が違う(イスラム?)ような人々が経営している。おもしろいよなぁ。
ショッピングはほとんど期待できないであろうということで、午後はオプショナルツアーに参加してバルセロナ郊外の、モンセラートという切り立った岩山の土地にある修道院を訪ねて行くことにしました。
キノコ山みたいな、灰褐色の岩山にへばりつくようにして建てられているモンセラート修道院。なぜこんなところに?と思うけれど、内乱が激しいころにはどんどんこういう所に人が上って行ったということ。なんかちょっと、日本の高野山を思い出してしまった。登山電車がはしっているのだけれど、あまりに崖が切り立っているので垂直に走っているようにも見える。
ここはエスコラニアという少年合唱団が有名で、日本にも何度かコンサートに来ているということ。残年ながら少年合唱団の歌声は聞けなかったけれど、あるミサ室へ行ったらちょうど10人くらいの大人の合唱団がミサ曲を歌っていて、それをじっくりと聞くことが出来た。ミサ曲はこういう所でこそ聞くのが一番ふさわしいような気がする。声が天井のステンドグラスに、壁面の彫刻に跳ねかえってとてもいい感じ。

2001.7.02(月) 3日目

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スペインの山。どこも大体
こんな感じの赤土、乾燥した草木でした。
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モンセラートの切り立った岩山。
手前に佇むのはドライバーさん
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モンセラート寺院。質素です
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モンセラート寺院の小部屋にあった、ミサ室。
ここで合唱が行われていました
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発見!ヨーロッパ圏内・初確認のアイスコーヒー。
右のコーヒーに左のエスプレッソを入れて飲む。
ちなみに右奥のオレンジジュースは
あまりに濃すぎて飲めなかった

本日、午前中は自由行動。母が昨日バスから見かけた黄色いアカシアの木がいたくお気に召したらしく、アカシアのあるところへ連れて行けという。うーむ、しかしどこに行けばいいんだ?ホテルの人に聞いたってわからないだろうしなぁ。
とりあえず地図を見て、ホテルの一番近くにある公園へ歩いて行くことにする。ところが!いけどもいけども公園は見えず、アカシアの木も見えない。どうやら同じ公園でも、だだっ広い敷地内に、病院やスタジアムや大学などが点在するだけ、という所らしい。母の顔がどんどん疲れてきて苛立ってきている様子。やばい。。とりあえず道行くタクシーを拾って、これも地図で見た適当な庭園公園に向かうようにお願いする。庭園と書いてあるし、今度は大丈夫でしょう。ところが!到着した公園は工事中。アカシアの木は見られませんでした。。母は「もういいよ、ホテルの近くにもアカシアを見たからそこで写真を撮れればいいわ」という。すんません。もくろみ違いでした。ガイドって難しいわ。。
タクシーで行った庭園はそんなにホテルから遠くなかったので、ぶらぶらと歩きながらホテルへ戻ることにする。近くのショッピングモールで昼食。英語がまったくもって通用しないし、英語メニューも全然ないし、辞書と首っ引きで四苦八苦して注文。海老のガーリックオイル炒め(これが絶品!)とガスパチョ、ハム、パン、それにワイン。ワインはグラスで頼んだつもりだったのにボトルで来てしまい、でもすごく飲みやすくて美味しくて、ついぐびぐびと飲んでしまった。母も飲み過ぎて、午後気持ち悪くなってしまっていたようだった。

午後は空路、南のセビリアへ。セビリアといえば「セビリアの理髪師」、なんだかのどかなイメージがあったけれどもとんでもない、とても大きな都市でした。南のアンダルシア地方の拠点らしい。
ホテルに着いたらその後、ツアーの皆とお食事ということだったのだけれど、母が(飲み過ぎで?)どうも気分が悪いということで私達だけキャンセル。ホテルでゆっくりすることにした。ホテルの目の前にスーパーがあったので私は果物でも買いにいこう、と買い出し。ふっつーうの、地元の人たちが買出しにいくようなスーパーで、それは良いのだけれど、すべての購入単位がでかすぎて!水は小さくて2リットル入りだし、小振りのヨーグルトもバラ買いが出来ない。(レジで4つからじゃないとダメだといわれてしまった)パンとかもダースで買わなくてはいけないみたいだし。。こまった、こまった。仕方ないのでグラム売りの果物を適当にチョイスして多めに買う。あと水。近くにバーガーキングがあったのでここでパンとサラダを買う。スペインではマクドナルドよりバーガーキングの方が多かったような気がする。ま、味的には私もこちらのほうが美味しいと思うんだけどね。
けっこう買い物に時間がかかってしまった。小一時間くらい。ホテルに戻ると、ホテルの前の路上で見たような人陰が。。母でした。右往左往していた。ど、どうしたの!?聞くと私の帰りがあまりに遅いので、いてもたってもいられず部屋から飛び出したらしい。ま、まさか添乗員さんに連絡とかしてないでしょうね! 幸いながらまだしていないということ。まったくもー。。。心配性なんだから。。路上に出たってどーしよーもないでしょうに。逆におかーさんがうろうろしていて事故にでもまきこまれたらどーすんの。危ないでしょ。
こういう時に海外でも使える携帯電話とかあれば便利なんだけどね。

夜は買ってきた食料をホテルで食べながら、部屋でのんびりと過ごす。テレビをつけると、闘牛の番組が放映されていた。
日本で言うとプロ野球中継みたいなもの?アナウンサーと解説者がナレーションをしていて、ここぞというポイントではスローで再生されて解説者のコメントが付く。なかなか面白かったです。こういう番組もあるのね。さすが国技だわ。
はじめてみる、闘牛。最初から最後まで4試合、きっちりと放映されていました。牛と人との、まさに死の舞い。
最初は、闘牛士の登場。牛の登場。やがて、牛の首を下げさせて、スピードを落とすために牛の首筋に飾り銛が打ち込まれる。わぁっと歓声。闘牛士と牛との掛け合い。牛が疲れてくると闘牛士が挑発する。牛が向かってくる。ひらりとかわす。。。そのくり返し。闘牛士は姿勢もプロポーションもとても美しくて、ダンサーのようでした。どうやら、いかに美しく、果敢に攻撃をかわすかがポイントとなっているようです。見事なかわし方をしたときにはスローモーションで解説もつく。
戦いも佳境にはいってきて、ここぞ!というときに闘牛士がスラリと長い剣を抜く。しばらく睨み合い。やがて牛が闘牛士に向かって突進してくる・・・そして・・・闘牛士は狙い定めて、牛の首筋、背中から一気に突き刺す!!グサーーッ、という音が聞こえてきそうなくらいインパクトありました。1メートルはありそうな刃渡りの剣が、握りづかのところまで、牛の首筋にめりこむ。すごい歓声! グラリ、と揺れる牛。そしてそのままドタっと倒れる。まだ息はあるようで、地面の上で手足をばたつかせる。そこに介助の人が登場、短剣で牛の首筋を刺す。何度も、何度も。そして牛は死ぬ。
闘牛士は大きな歓声を浴びて、勝利の雄叫び、ポーズ。片手には今さっき倒した牛から切り取った足首。断面が鮮血で生々しい。
死体となった牛は、2頭立ての馬にひきずられて退場していく。そして闘牛士は満場の喝采を浴び、肩車をされて、花束を受け取る。。。
すごい、ショッキングでした。ドキドキした。。。母は見ていられなかった様でした。
野蛮といってしまえばそれまでだけれど、結局私達だって、屠殺所で牛を毎日殺しているのだし、目をそらすのは間違っているような気もした。違うかな。それに食用牛と違うところは、この牛は尊厳を与えられて殺されるところかなと思ってみたり。。まれにすっごい勇敢な牛は殺されずにたたえられ、種牛としてその後も育てられることもあるのだそうです。闘牛の肉も、固くて筋張っているにも関わらず闘牛場の場外で高い値段で売られるそうですしね。
そこには、 人が忘れていた生命の交歓、死を見つめる気持ち、なんかそんなものがあるのかな、なんて。。思ったりしましたよ。あーこれを書いていて、またドキドキを思い出してしまいましたよ。すごかったです、ほんと。

2001.7.03(火) 4日目

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スペイン広場にあったタイル画。
ドン・キホーテ。かわいー。
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サンタ・クルス街のお土産屋さん。
ドレスが目に眩しい。
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フラメンコ

本日、午前中はセビリアの市内観光。まずはスペイン広場へ。1929年のスペイン・アメリカ博覧会の会場として作られた半円形の建物が見事。壁面にタイルでスペイン内、それぞれの地方都市の紹介が描かれていてこれも素敵。陽光溢れる、ゴシック様式とタイルの調和が美しい広場でした。現在は建物の一部は市庁舎として使われているとのこと。ガイドさんの説明では「働かないスペイン人のなかで特に働かないので有名なのがここの、お役所の職員さんたちです」とか言っていて、笑ってしまった。役所は仕事は楽な上に失業の心配もないから、応募者殺到で、役人試験もなかなか難しいと言うこと。どこの国も一緒ねぇ!(失礼?!)一度受かってしまえば一生安楽ってとこも、納得納得。
北部のバルセロナやマドリッドではそうでもないらしいのですが、ここ南部のアンダルシア地方は「濃い」スペイン文化がまだまだ残っていて、シエスタの習慣もまだまだ健在だということ。お昼になると3、4時間くらいお休みとってゆっくり食事して、昼寝までしてしまう。そのうえ、バカンスで夏休みは1ヶ月単位で休めるんでしょう。みんな家族で車を使って地方に避暑に出かけて、滞在型でゆっくりと休暇を楽しむらしい。
ビジネスの視点ではんんん。。なんでしょうけれど、スペインでは物価も安いので、月収20万くらいでも、こうやって生活をして贅沢をしなければ十分楽しめるらしい。イイヨナァ。心が豊かになるような気がするよ。は〜こういう生活してみたいけど、日本じゃ無理だろうな。

その後バスで中央教会(カテドラル)へ。バルセロナでも見たけれど、地方地方でかならずこういう、メインの教会があるんですね。ここのカテドラルはスペインで一番大きいということで、それはそれは立派なものでした。ここはかつてイスラム教のモスクを立て直したものであるということで、塔はイスラム装飾の雰囲気を残していてこれまた赴き深い。アメリカ大陸を発見したコロンブスのお墓なんかもありました。

午後は自由行動。午前中にちらっと行ってとても気に入った、サンタ・クルス街で散策。ここはかつてユダヤ人街であったということだが、かつて彼等は迫害され追い出され、今ではスペイン人達が住んでいる。かつてユダヤ人たちの礼拝所であったところもキリスト教の十字架に置き換えられてしまったりしていて、ちょっと寂しいね。
でもここは、まさにアンダルシアの風景!というような、細い路地に白い壁、花々が窓からこぼれおちるというようなロマンティックな地区でした。かつてのユダヤ人たちの知恵で、日陰を作るために路地はとても狭く作られており、一度足を踏み入れるとひやっとしていてとても涼しい。暑いといっても日本みたいに湿気が強いわけじゃないから、日陰に入ると案外過ごしやすいんですね。事実、真夏の日中は50度近くにも上がるというこの地方でも、一般家庭にクーラーはほとんどないとのこと。クーラーなんかなくても日陰と風だけで十分に涼しく過ごせるみたいです。

夜は8時から、ツアーの皆と一緒に同じサンタ・クルス街にある有名なタブラオ(劇場)でフラメンコを見る。Los Gallos(ロス・ガリョス)という小さなお店。フラメンコの本場アンダルシアでも有名なタブラオらしく、店内は熱気むんむん。お客さんでごったがえしていた。
ショーは全部で4幕。4人の女性と1人の男性が踊った。いやぁーもう素晴らしかった!なんという官能、なんという情熱。素敵。本当にセクシー。フラメンコを見るのは初めてだったのだけれど、すっかり魅せられてしまいました。母と一緒に来ているというのにドキドキしちゃいましたよ。。。今度はフラメンコの絵も描きたいな。(と描きたいものだけがどんどん溜まっていく。。)

2001.7.04(水) 5日目

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メスキータ内部。
赤と白のアーチが美しいですね
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お土産屋さん店内のパティオ(中庭)

今日からバスの旅。南のアンダルシア地方をぐるりと周遊します。
まずはセビリアから約150km 北東の、コルドバへ。南部は長いことイスラム王朝に支配されていたということで、北部とは違いかなりエキゾチックな匂いが漂うかんじ。ここも長いことイスラムのウマイヤ朝が栄えたということで、そこここにイスラム文化の名残りを感じ受けました。
まずはメスキータ(モスク)へ。新旧・東西の建築技術がごった煮にされたような、不思議な建物です。世界遺産。
元々、ここはかつてのイスラム・ウマイヤ朝の王様が、原住の西ゴート族から買い取った礼拝所を改装して作ったモスクだったのですが、その後キリスト教徒達のレコンキスタ(国土回復運動)でコルドバが奪回されると、このモスクをカテドラル(教会)にまたもや改装。今の様式に至ったということです。1000年にも渡る宗教を超えての改装工事が、不思議な雰囲気を醸し出します。たとえばこの柱はローマ時代のもの、天井装飾はキリスト教のゴシック様式、中庭の様式はイスラム風、という様に。ガイドさんいわく、イスラム教の教会とキリスト教の教会との大きな違いは、光の入り方具合なんだとか。キリスト教は天井からの光が主で、壁は大体塗りつぶされている。ステンドグラスがあったりして、室内はけっこう暗い。イスラム教では光は横から入る。だから壁は塗りつぶさず、もちろん彫刻や置き物なんかは全然なくて、室内は明るい。ほーなるほど、とか思ってしまいました。そういえば、昔ブルネイ(すごく敬虔なイスラム教徒の国)に行った時にもモスクに入ったのですが、陽光さんさんと降り注いで、すっごく明るかったもんなぁ。壁なんかほとんどなくて。そういう文化比較って面白いね。

さて、その後、またコルドバのユダヤ人街へ。セビリアと同じく、ここもかつてユダヤ人が住んでいたところだったのですが今はスペイン人の居住する街。パティオ(中庭)がそこここにあって、それぞれ趣向を凝らしたインテリアを楽しんでいる。たまに中庭へのドアを開けてあるところがあって、そういう所には自由に入って見て写真を撮ってもいいらしい。自慢の中庭なのね!素敵ね、そういうの。空いているドアを見つけるとなるべく入ってパチパチ写真を撮った。パティオ・コレクションが出来ちゃった。ふふふ。有名な「花の小道」というのもここにあった。

ご飯を食べて一路グラナダへ。コルドバから南東へ約160km。
ここには有名なアルハンブラ宮殿がある。世界遺産。もう夜だったので観光は出来なかったけれど、アルハンブラ宮殿の夜景が美しい!ということで急きょ、ツアー仲間の人たちとタクシーを乗り付けてアルハンブラ宮殿の見える夜景スポットへ行った。日もとっぷりと暮れて、日中の暑さが嘘のように涼しい。ここは地元でもデートスポットらしく、若者が沢山ワイワイと来ていた。あるものは肩を寄せあって、あるものはギターをかきならして。たのしそー。空には満月がポッカリと浮かんでいて、冴え冴えと、良く見えるの。その下にぼんやりとライトアップされて映るアルハンブラ宮殿。それはそれは幻想的でした。

2001.7.05(木) 6日目

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アルハンブラ宮殿。
横に映っているのは観光客のお姉さんです
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白い村・ミハス

今日、午前中はアルハンブラ宮殿の見学。
グラナダでは15世紀末まで、スペインでは最後の最後までイスラム勢力を誇っていた国で、スペインの中では一番イスラム風味が強いところでした。なかでも王宮は千夜一夜の世界みたい。うーんロマンティック!その昔、ここではどんな風景が展開されていたのでしょう。。後宮は典型的なハーレムとして建築されており、アラブの人々の息遣いが聞こえてきそう。
イスラムは砂漠で興った宗教なので、水を楽園の象徴として考えるとのこと、王宮にも中庭のあちこちに噴水が配置されていました。遠くの山々から地下配水を使って引いてきた水が、500年も前からのシステムのまま、山から落としてくるエネルギーを使ってちょろちょろと沸き上がります。今でも全く手を加えないまま、使っているそうです。見事。
外に出ると広大な庭園が続く。ここは近年になって整備したらしく、イスラム建築ではなく近世のキリスト教の建築っぽい雰囲気でした。でも背の高いヒバの木をきれいに刈り込んで、中央には池があって噴水があって、これはこれでちょっと迷宮っぽい雰囲気で、とても素敵。

さて、アルハンブラを見終わったらまたもやバスに乗り込み、今度は一路南のコスタ・デル・ソル(太陽の海岸)へ。グラナダから南へ120km。
延々とオリーブ畑が続く道の途中、山の中腹にある白い村ミハスへ。白い家と青い海との対比が素晴らしい!交通の便も良く、けっこう観光スポットらしい。お土産物やさんもいっぱいある。坂の上の、海が一望できるレストランで食事。あー素敵ねー。こういう所は通過するだけじゃなくて1週間くらい、滞在してゆるゆると楽しめたら最高だろうなー。

昼食を食べたらバスに乗り込み、また海沿いに南下、60km。コスタ・デル・ソルの高級リゾート地、マルベーリャに到着。なかなかホテルもリゾートな雰囲気で、プールも楽しそう。そろそろ旅の疲れもたまってきたし、今日はホテルでゆっくりしよう。母は部屋でひと休み、私はプールで泳いだりプールサイドで本を読んだり、のんびりと過ごしました。
ここのホテルにはカジノがあり、私達もスロットをやったのですが全然勝手もわからず、1000円くらい注ぎ込んでやめてしまいた。ところが!次の日の朝、教えてもらったことだったのですが、ツアーで一緒に来ていた新婚旅行のカップルがなんと20万円、スロットであててしまったということで。。すごい!!ご両人とも、カジノは初めてだったらしいのですが、女の子の方がスロットに触ってちょっといじったらすぐ、コインがジャラジャラジャラ〜と出てきて係の人が「Congratulation!!(おめでとーございまーす!)」と出てきて握手され、何がなんだかわからぬまま・・ということだったそう。それにしてもすごい。ほんとにいたのねぇ、カジノで当てる人。しかもそれが新婚旅行でだなんて。幸先良さそうじゃありませんか!?

2001.7.06(金) 7日目

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崖の街、ロンダ
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ロンダの理髪師

さて、マルベーリャのホテルをチェックアウトして、バスに乗り込む。次は山あいの崖の上の街、ロンダへ。マルベーリャから北に50Km。
ここはとにかく橋が素晴らしかった!橋の下を見下ろすと奈落の底まで落ちていきそうな断がい絶壁。昔の人はよくこんなところに橋を作ったなぁ。。と通り一遍の感想をもらしつつ、街を散策してショッピング。
解散後、1時間後に待ち合わせ場所に集合するはずだったのですが、ウッカリしていて私達は15分程遅刻してしまいました。私は腕時計をしていないし、母は待ち合わせ時間を勘違いして覚えていて。待ち合わせ場所では添乗員さんがソワソワしながら私達を待っていて、母はすっかり恐縮してしまって。バスの中ではお互いに責任のなすり付けあいしてしばらく険悪な雰囲気。。あーあー、だから団体行動のツアーなんてヤなのよー!と私も完全に逆切れ。バスの中で待ってて下さったツアーの皆様にはご迷惑をおかけしました。

さて、そのままバスはセビリアに向かい、セビリアからスペインの超特急(新幹線みたいなものか?)アヴェに乗ってマドリードへ。
このアヴェ、時間にルーズなスペインの国民性としてはかなり、キッチリキッチリと走っているらしく、かなり快適です。駅も近代的。私達はビジネスクラスでラウンジも利用でき、荷物はポーターさんが運んでくれるのでかなり、殿様気分を満喫できました。社内では機内食サービスもあり。車窓を眺め、ワインをちびちび飲みながらサンドウィッチをぱくつく。

マドリードへ着いたらそのままホテルへ。あーこれもポーターさんがいるから楽チーン♪(しつこいって?)
夜はホテルの向いの、シーフードレストランへ行きました。ガスパチョとシーフードマリネ、海老のガーリックオイル炒めを注文。私はこのガスパチョと海老〜のやつにハマって、こればーっかり食べてました。だって旨いんだモン。日本に帰ってからも作ろうかな。

2001.7.07(土) 8日目

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トレドの町並。南の方とはまた違う趣き
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おじいちゃん達の井戸端会議

さて、今日はマドリードと、マドリードから車で1時間程南に下った古都、トレドを廻る。
まずはトレド。ここでは何を置いてもグレコの絵!サント・トメ教会でグレコの傑作「オルガス伯爵の埋葬」を見る。スペイン式の肖像画でもあり、天と地とをわけた宗教画でもあり。精神体の赤ちゃんの姿を取るキリストが、大天使ガブリエルの介添えを得て雲のような産道から天界へ生まれいずるような描写も、なかなか奥深い。
グレコは一説によると、彼の乱視が原因であのような、手と足がながーーい人物描写になったという。そして、それがオリジナリティに繋がり評価されたそうだ。本当だとしたら面白いね。災い転じて福となすとはまさにこのこと!?

またトレドのカテドラル(中央教会)にも行く。ここでは圧倒的な天井の彫刻、装飾が印象的でした。天窓からの光が、祭壇の司祭に届くように計算されている。そしてその天窓の周りに、天使や、マリアや、その他聖人達の彫刻がいーっぱい!!こちらに語りかけてくるように、手をのばしてくる。圧倒的。こりゃ、信者はたまらんだろうなぁ。。圧倒的な神様の存在に畏れおののくだろうね。そして教会は力を持つはずですよ!
壁面の一つには垂れ幕として、巨人の聖人・クリストフォロスの等身大の肖像?が。ビル3階分はあろうかという大きさ。こりゃほんとにいたらビックリですよ。手には小さなキリストを抱えていました。迫力、迫力。

マドリードに帰ってきて、スペイン広場でドン・キホーテの銅像を拝んだ後、プラド美術館へ。
このプラド!楽しみにしていたんだ〜わくわく。アンジェリコの「受胎告知」、ゴヤの「黒い絵」「着衣/裸の」マハ、ラファエロの「キリストの変容」、ベラスケスの「ラス・メニーナス」、ボッスの「快楽の園」、ああ、素敵な絵がいっぱいでドキドキしてしまう。
ミュージアムショップで本や絵葉書を買いまくる。ああ、ここ、一日中いてもっとじっくりと見たい。。

夕飯はツアーの一貫で、ちょっといいシーフード・レストランでロブスターのコースを。ロブスターの身はプリプリで、焼き加減もグー。大変おいしゅうございました。スペインでは「はずれ」のお店があんまり無かったね。全体的に、食べ物はとても美味しい。
ここで、マルベーリャのカジノで20万円当てたという新婚旅行のお二人が、私達にワインをごちそうしてくれた。わーお気づかい頂いてありがとう!美味しく頂きました。これがスペイン最後の晩さんということで、席は大いに盛り上がる。そしてその後、二次会にいこう!ということでホテルのバールになだれ込み。今回のツアー、年齢層がとても若めで、母なんかはもう、若い人に囲まれてとても嬉しそうでした。えっらい調子に乗って突っぱしって喋りまくっており、横で見ている娘はハラハラしどおし。。。まぁ楽しければいいんだけど。しかしまたもや彼女は次の日、二日酔いになっていました。私も酔っぱらってダンナに国際電話かけてしまってたんですけどね(次の日記憶がなかった)。まったくもって困った母娘だね!でも大層楽しい夜でした。

2001.7.08(日) 9日目

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スペイン広場にて。オリーブの木の下でお弁当

今日はスペイン最後の日。出発は午後で、午前中は時間があったので私だけ、もう一度プラド美術館に行くことにした。母は昨日の二日酔いでダウン。私も。。実はちょっと頭が痛かったんだけど、折角だしね!
ピーター・ブリューゲルの「The triumph of Death」に魅入る。すごい迫力。。。骸骨達が人間を狩っている。遠くには車輪にのせられた死体がさらされ、人間達の阿鼻叫喚が聞こえてきそう。。地獄。すごい、こわい、すごい。引き寄せられてしまう。
あと印象的だったのは、ボッティチェリの女狩りの絵「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」。これは淫乱を働いたみだらな女を裸にして狩り場に放して、犬に食わせて内臓を取り出す話(おえー!)を描写したもの。中世独特の残酷さが出ていて、これもまた引き寄せられました。ボッティチェリの甘い画風と、題材の残酷さが対照的。なぜこの二枚に興味を持ったのか。今私、残酷な絵を描きたいのかしら?

さて、美術館も堪能したことだし、午後はマドリード空港から旅立ちます。楽しかったね、スペイン。
行きと同じく、オランダのスキポール空港で乗り換える。帰りのJAL便はまたもや満席。ほとんどが日本人だったのですが、ふと隣をみると、可愛らしい金髪の女の子が一人で座っていた。道々話を聞くと彼女は17才のオランダの女子高生で、今からニュージーランドへ交換留学生として1年間、勉強しにいくのだということ。ヨーロッパの地からオセアニアに行くには、日本を経由していくらしいのだ。聞くと日本滞在はたったの4時間。そして乗り換えて、そのあとニュージーランドへ向かうので合計、延々23時間飛行機に乗る予定らしい!ひえー。
さっきまで家族がお見送りにきていたということ、自分もこんなに長い旅をするのははじめてらしい。飛行機が離陸する瞬間、ほんとうにわくわくした顔で「Here we go!」とか言うんだよ〜。かわいーっ。飛行機に乗るのも初めてみたいだったので座席の操作方法を教えたり、映画の感想を話したりして楽しく過ごしました。あと私がお箸を使っているのをみて興味津々。「どうやって使うの?」というので使い方を教えてあげました。チョップスティックスもはじめてだったらしい。今度はぜひ日本にも遊びに来てね!といって別れました。

2001.7.09(月) 10日目

延々12時間のフライトのあと、無事とうちゃーく。日本では まだ梅雨があけきっていなくて、飛行機のタラップを降りたとたん「蒸しっ」とした暑さにつつまれて、ああアジアの夏だなぁ。。としみじみと思ってしまいました。
ダンナ様は会社を休めたらしいので成田空港に迎えに来てくれました。久々の再開のような気がして、ちょっと新鮮でいいですな。なんちゃって。車で一路おうちへ。
ともあれ、無事に帰れてよかったよかった。



ふー、めまぐるしい旅行でしたがなんとか無事に終了。まぁ、少ない日程でポイントを押さえて、かなり効率良くまわれたんじゃないかと思います。さすがツアー。考え尽くされてますね。
でも、時間厳守の旅はやっぱつかれる〜!とりあえず、スペインの要所は押さえたので次は個人旅行で行きたいものです。できれば一つの滞在地に、最低3泊はしたい。コスタ・デル・ソルの高級リゾート地で、なんてことは言わないからせめて海岸沿いのミハスみたいなのんびりした村で、強い日射しを感じながら涼しい木陰で、ぼーっとのんびり出来たら最高だな。そんで、傍らにはサングリア。くーっいいねー!
黄色い日射しとグレーの木陰、赤い大地と緑のオリーブに白い家、そういった色の対比がすごく印象的な国でした。
ちらりと見た闘牛も、フラメンコも心にずっしりときた。さすが、情熱の国。 また来たい、スペイン。